ペタンコ祭りとは 浅間信仰とお七夜儀礼(あやつこ)

栃木県では、子供が生まれて7日目のお七夜に、赤ちゃんの額に鍋墨で「犬」の文字を書き
セッチンマイリ(便所参り)をして、子供の無事成長をねがう儀礼がおこなわれている。

 「そんなの聞いたことがない!」という人が多いと思うが、いまでも栃木県下では
 お七夜・お宮参りなどで、赤ちゃんの額に「犬」と書くことが広く行われている。

  栗山村では、囲炉裏の炭を赤ちゃんの額に塗って便所参り。
  粟野町では、額に「犬」の文字を書いてせっちん参り。
  このほか那須・黒羽・鹿沼・塩原の一部地域などに見られる。

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「あやつこ」


この様に子供の額に「犬」の字を額に書く風習は「あやつこ」と呼ばれ
平安時代から1000年以上続く通過儀礼である。

全国的には「大」「小」「戌」「×」などのバリエーションがあり
秘密のケンミンSHOW> では、三重県の秘密として放送された。


現在のお七夜は「赤ちゃんの命名式」として、家族だけのお祝いになっているが
昔は、足利市全域で生後7日目に「シチヤ祝い」とセッチンマイリが行われた。
オサゴ(白米を半紙包んだもの)と尾頭付きの魚をそなえて厠(かわや)の神に
赤ちゃんの無事成長を祈ったという。

お七夜でセッチンマイリが行われていた足利市で、赤ちゃんの額に「犬」と書かないのは
それに代わるものに変化したのだとも考えられる。


富士行者によって、栃木県(下野国)に持ち込まれた「浅間信仰」は
富士山の上部を見ることができる栃木県南地方で、江戸時代後期に大流行をする。

栃木県(下野国)の各地に「浅間講」「仙元講」(富士講)が起こり、ある時期には
足利地内に33社の浅間神社があったと伝わり、両親が浅間信仰に係わっていれば
赤ちゃんのお宮参りにも、浅間神社が利用されたと考えられる。
ペタンコ祭りとは、浅間神社の初山詣(生まれて初めての山開きに浅間神社に詣でる)と
お七夜儀礼の「お宮参り(産土詣で)」&「あやつこ」が融合した行事である。


「浅間講」から「初山講」になり、お祭りを引き継いできた足利冨士浅間神社では
ペタンコ祭りの始まりを、文禄年間(1592年頃)に富士行者「長谷川角行」から伝えられた
<幼児の額に朱印を授ける神事>であるとしている。


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