胎蔵曼荼羅と万字


胎蔵曼荼羅は、八葉蓮華をかたどる「中台八葉院」を中心に「十三の院」からなり
大日如来の説く真理や悟りの境地を、視覚的に表現した曼荼羅である。

大日如来を取り囲む、4体の如来と4体の菩薩が「五転」と呼ばれる流れを表わし
八葉蓮華は右回りの渦を発生させる配置になっている。


中台八葉院の上部には「遍智院」があり
中央には『如来のあまねく智慧の光』を象徴した「一切如来智印」がある。

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 一切如来智印

多くは、「円の中で燃え上がる三角形」であらわされ
太陽光のエネルギーが、右万字(逆万字)として描かれる。

鑁阿寺の一切如来智印では「 卍 (左万字)」として描かれている。)


大日如来(お経)の世界を視覚化した、曼荼羅図に描かれた「燃え上がる三角」を見て
富士の山頂は「八葉蓮華の浄土」とする、富士山信仰の人々は何を連想しただろうか。



足利周辺では、左万字と右万字が混在して見られるので、黒万字・赤万字・白万字講などと
書かれていないものは講名がわからず( 卍講 ・ 逆卍講 )と一括りにしている。

栃木県で現在も活動をしている富士講
「 右万字(逆万字)」の講紋を使用して、野州晴山講(栃木市大平町)と言う。
ここにある浅間宮の石祠でも「 卍 (左万字)紋」が見られる。

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晴山講の石祠は、足利市田島町にある石祠の万字紋と似た特徴がある。
また、この両地域には星宮信仰とその禁忌が伝わるなど、離れた場所で
浅間信仰以外にも共通する背景が見られて面白い。


距離的には遠く離れた、足利で見られる卍紋と、6世 村上光清の同行が使う卍紋も
村上光清の父親(角行の法脈を継ぐことになる、後の5世「月心」)が
4世「月旺」と共に、足利の大月村で布教活動をしていることを考えれば、無関係には思えない。